新庄発 … 短信集  長 月

2021年9月15日
文責 : 遠藤 敏信


●2~3日前、2021年産米のJA概算金の内訳が新聞に出ていた。コロナ禍で外食需要の減が大きな原因だと言う。予想のこととは言え1俵(60㎏)当たり2200円減はとても大きい。
 無農薬米はやはり寄る年波で体にきつ過ぎるが、皆様方の農に対しての励ましが大きな支えである。今日13日、コンバインと乾燥機の調子を見る為イネを刈り始めた。
【 今田 多一 】

●11日の毎日新聞に元村有紀子記者の書いた一文が私の心を感動させ2回3回と読む。こんなに見事に構成された文章を私も一度でいいから書いてみたいと思った。私なりに読んだ感想の要旨をまとめようとしたが、途中でやめた。全文を読んでもらうのが一番だ。
 1万年も続いたといわれる縄文時代は集落を作って定住し、自然の素材で衣食住をまかなった。戦争をした痕跡が見つからず、共同体で助け合い、平和に自然の恵みを受け豊かに人々が暮らしていた時代であったかも知れない。そして最後に、元村さんは自然から奪い尽くし、他者への寛容さを失い、敵を作って戦いをやめようとしない現代人を縄文人はどう見るだろうかと書いている。    元村さんの文章は短信集の裏面に掲載しています。
【 三原 茂夫 】

●コロナ禍の中でも季節は駆け足で過ぎてゆく。8月10日までの猛暑が一転して台風の通過後からは低温と曇雨天が続き出穂が速まったイネだったが登熟は足踏み状態。それでも天候が持ち直したことから早生種では稲刈りが始まった。この夏の我家を決算すると、スイカは甘みが少なく、大根のようでタヌキも食べず、後で着果したものはいくらか甘くなったが、とたんにタヌキが食い荒らしてくれた。スイートコーンはすべてタヌ公への奉仕となり、枝豆までも。キューりと茄子はカラスが食べもしないで身を突つく。誰のために植えているのかとさえ思ってしまう。
 6月に植えたウルイは猛暑と干天の為3割ほど枯死してしまい、補植するにも苗は無しといった具合。このような異常気象が続けば若者はますます農業に就くことをためらうであろう。そう遠くない将来「日本に農業はいらない」などと声高に叫ばなくても、この国から生業としての農業は消滅してしまうような気がしてならない。
【 笹 輝美 】

●私は思う。芸術も文化もスポーツも大切なものだ。その大切なものに序列をつけるなんてことはできないが、それらは食が満たされてこそ輝きを持つものではないのか、と。
 仕事で頑張れるのは、人の生存に不可欠な食の生産に関わっていることへのささやかな喜びがあるからではないのか、と。文化・芸術・スポーツなどが安心してできるような平和な世の中であってほしいと願う。
 8月22日、オンラインで天笠啓祐さんの「ゲノム編集に関する現状と危うさについての講義」を聞いた。種の独占化を図り、最終的には食を通して人・国を支配するような企ては許されることではない、と思う。 むずかしいことを書いて、混乱しています。
【 遠藤 信子 】

●13日稲刈りを始めた。早生種のもち米からだが、こんなに早い刈り取りは初めてだ。
 高校時代の同級生から手紙が届いた。宮城の小学校で教鞭をとった方で、長く私のコメをご愛顧いただいている。農縁の会員ではないがその都度、短信集を添えていた。… で、転載の承諾を得たので、その便りを紹介します。

 いつも美味しいお米を送っていただきありがとうございます。同封されてくる短信集、毎回興味深く読んでいます。もっぱら人様が手をかけ、育て、収穫してくださった作物をいただくばかりの私にとって、これは作り手の思いを知るための大切なお便りです。いつも共感したり、感心しながら読んでいます。
 土に向き合い、自然を頼りにして生きる事と、この世界がどうあるべきかを考えることは決して無関係ではなく、強く結びついているのだということをいつも教えられます。
 地球という一つの星に生きている私たち(人間を含むあらゆる動物や植物)が互いに共存して生きるという理想に向かって、今 、何かをしなければならないのかを、普段の生活の中で、少しでも意識しながら暮らすことができればと思っています。
 一方、現実は人間中心の自然破壊と、人間同士の絶え間ない対立と抗争、揚句の果ての殺し合い … 目を覆いたくなるようなニュースばかりです。せめて書物や賢者の言葉を借りて、希望を失うことが無いように心がけている毎日です。
 農縁の皆様、これからも地に足をつけた心強いお便りを、楽しみにしています。
 実年齢よりも、気持ちはずっとお若い皆さま、それでも体には十分気をつけてお励みください。仙台市 : S. 泰子 

   20年ほど前、彼女の授業に呼ばれて"米作り"について子供たちに話をしたことがある。又翌年には校庭の一隅を掘り起こしブルーシートを敷いて土を戻し即席の田んぼを作り、田植えをし、緑陰講話をしたこともあった。全くの砂地で地力がなかったことで見事に失敗したことをのちに聞いたっけ。それにしても、こういう便りはうれしい。      【 遠藤 敏信 】


三原さんが読み、感動したという文章 「毎日新聞」9月11日号 オピニオンから
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