新庄発 … 短信集   皐 月

           2019年5月15日
文責 : 遠藤 敏信
木々の若葉がみるみる拡がる。山肌が膨らむ。山笑う季節だ

◦ここ数年、失敗ばかりで満足のゆく苗作りが出来ていない。今年こそはと催芽機を使い、苗箱の土を変えて万全を期したが、シートを取ったら又も発芽がそろわず何が原因でこうなるのか全く分からない。
◦5月に入ると晴れの日が続き鳥海山や月山がくっきり見える。日本各地に〇〇富士と名の付く山は多いが、新庄から見える鳥海山こそがその名にもっともふさわしい姿をしていると思う。
 【 三原 茂夫 】

◦雪が少なかった割には、私が田起こしをしている時には田は乾かず、終わったら快晴の日が続く。タイミングよくはなかなかならないものである。只今、代掻き中である。
◦4/30、5/1、テレビは改元放送ばかりで少しウンザリであった。村では国旗を掲げる家が多かった。私には少し違和感がある感じである。     
【 今田 多一 】

 私達百姓には無関係な10連休が終わり、令和のバカ騒ぎも終わり、木々の芽吹きと山桜もまたたく間に終わり、新緑の鮮やかさに覆われ心弾むような季節となった。
 麓から見る山の残雪は例年と変わりないように見えるが、山に入った人の話では小雪の年とは思えない程、多かったという。為に、田圃の水路を走る水は氷のように冷たく1分と手を入れている事は出来ない。
 連休前半はゴールデン農作業日とはならず、仕事は全く進まず焦った。後半からは持ち直しイッキに多忙となった。
 行政やマスコミはよく農業者の高齢化を取り上げるが、何故若者が農業に就かないかについては全く触れようとはしない。「日本に農業はいらない」という財界の悲願が叶う日もそう遠くないのかも知れない。私達はそんな事には関係なく、文化としての農を、土を耕し続けてゆきたいものである。世界の大富豪たった26人で38億人分の資産を手にしているような事態はくるっている、と私は思うのだが。     
【 笹 輝美 】

 新緑が鮮やかだ。田んぼ脇の八重桜が満開を過ぎ、少し散りはじめた。5月に入っての好天に促されイネの苗がスクスクと育っている。今、代掻きや水管理で忙しいがとても爽やかでいい季節がきたな、と思う。
が、私と来たら、朝仕事の一番、さわやかな風にあたってクシャミである。アレルギー性鼻炎(俗に言う、花粉症)だ。私はスギ花粉には反応しなくて、今盛んに成長する地上雑草類に過敏なのだ。ひょっとすると百姓は向きでなかったのかな、などと馬鹿な戯れ言をつぶやく。
それにしても、この春の「改元」に至る動きで改めて思ったことは、「平成天皇」は
 憲法にのっとって行動し、過去のあやまち(戦争)を悔やみ、平和を希求して行動した
ということ。一方、国の統治者である宰相は、何としても憲法を変えて国家自在のあり方
にしたい意向だ。問われるのは民意。このままではいけない。「何とかさんなね」と、切に思う。                            【 遠藤 敏信】



新庄発 … 短信集  卯 月


2019年4月15日文責 : 遠藤 敏信

春 が き た

  3月末と4/11積雪あり、なごり雪が少し多めに降り寒さがぶり返した。
種まき作業に向けて、春の農作業も本格化してきた。毎年、同じことをくり返しているのだが体が慣れるまで、やはり足腰に来る。年のせいでもあるが … 。
  種まきは、16、17日に予定している。
 【 今田 多一 】

   ◦11日の朝、今月に入ってから4度目の積雪。雪国とはいえめずらしいことだ。
◦「石川啄木」D.キーン(今年の2月に96歳で亡くなる)を読む。この本を出版したのは驚くなかれ、何と93歳の時である。私が最も感動したのはこの著の最後に書かれているローマ字日記に関するエピソードである。啄木は遺言として友(丸谷喜市)に死んだら日記を焼いてくれと頼む。友は何度も実行しようとするが、その価値を知る市立函館図書館の岡田健蔵の必死の抵抗によって守られた。この話を読んで私は作品や本には作者の思惑を超えた意志や力があるのではないかと思うようになった。これと似たような事が歴史上何回か起きていることを私は知っている。
【 三原 茂夫 】

  「雪は、降る時期に降らないといつまでもダラダラと降り、春の天候不順を招く」
そんな先人たちからの言い伝えが見事に当たり、彼岸過ぎから低温が続き4月に入っても時々雪が降り、私の所では朝起きたら10cm近く積もっていた日が3日もあった。13日になりやっと気温が上って来て春らしく感じられる。植木の雪囲い外しや、稲の播種の準備に忙しくなってきた。そして世の中10連休の話でもちきりだが、私たちには全く関係のない事。ただただ天候が安定し、ゴールデン農作業日となることを願っている。
 古来、自然のすべてを神と仰いできた先人たちによれば、山の神が春になると里に下りてきて御田の神になり、秋の取入れが終るとまた山の神となって山に戻ってゆく。日本ほど神様が多い国はないそうだが、そんな神様たちはケンカはしないしお互いを認め合っている。絶対神が存在する国とは違う。そして先日聞いた話だが、ヨーロッパには騎士道、日本には武士道があり、双方とも金への執着を良しとしないところがあるが、先住民を駆逐して新しく生まれた彼の国には、そのような規範はなく、あるのは守銭奴(道)である。ナルホドと思った。
【 笹 輝美 】

“三寒四温”寒さと温かさを繰り返して、春が、来る。来た。
 イネの種まき時の季節になると毎年同じ感慨にとらわれるから不思議だ。季節の移り変わりに思う想いは昔も今も変わらない。
 気を張ることの多かった日々から、時間的にゆとりができたこの春、桜のつぼみの膨らみに、草木の芽吹きに、少しばかり心がはずむ。
今村祥吾さんは多作だ。新作「てらこや(せい)義堂(ぎどう) 師匠走る」、「羽州ぼろ鳶組 ⓼ (ぎょく)麒麟(きりん)」が出た。何とも痛快な運びで面白かった。

                         【 遠藤 敏信 】

白鳥が羽を休めていた