新庄発 … 短信集 … 卯 月

                
2025年4月16日
編 集:遠藤 敏信


 •  ネットワーク農縁 の設立から30年、去る3月22日・23日に新庄で収穫感謝祭を開催しました。生産者と消費者・支援者を含め総勢43名が集いました。餅つきや郷土料理を囲んで交流を深め、農家が直面する多くの課題と現状を共有しました。参加いただいた皆様からの深い励ましと提案に心から感謝申し上げます。

 さて私の実家は農家ではないものの、わずかに山林を所有しており、80代の父が間伐や下草刈り、林道の整備などの管理をしてきました。春の山菜、秋のキノコ類はもちろん、冬の暖房となる薪は山の恵みによるものです。しかし、これらは両親が手をかけてきたからこそのもので、私の世代では手に負えるものではありません。あと何年維持できるか … 。
  手をかけてこその恩恵であり、放置しては何も得られないばかりか、里山の生活にマイナスをもたらす恐れさえあり、そう考えると親のありがたさや偉大さを感じずにはいられません。どうにかして誰もが納得できる代替わりを、前向きに進めていかなければいけないのですが、課題は山積みの状態です。何事も「継ぐ 」ことの難しさを痛感しています。
【 工藤 恵子 】  

 • 現在、就農している生産者の平均年齢が68,5だというが、私は73歳である。村の中では明るいうちに夜上り(廃業)だという。でも同年輩の人達もなかなか決断がつかない。村では受け手になる人ももう拡大は限界だという。貸してはあるが、受け手になる人もいないのである。私は農業は崖っぷちで崩壊寸前であると思っている。だから3月30日の「令和の百姓一揆」にはぜひ参加したいと思っていた。
 繁栄の象徴でもあるグローバル企業のブランド店舗が立ち並ぶ東京・渋谷の表参道を”時給10円“の農民が「限界超えてる。農家を守ろう。今動かなきゃ農業守れない。みんな立ち上がれ。今が正念場」とコールする。好奇の目でデモを見る人もいたが、沿道や歩道橋の上から「頑張れ!」と励ましの声援をくれる人も大勢いた。
 長い間、高い・安い、うまい・まずい、有機・慣行、専業・兼業、作付け面積が大きい・小さい、様々な分断を今改めて乗り越えて生産者・消費費者が日本の農といのちを共に作って行こうという呼びかけだと思った。
【 今田 多一 】

• 新庄での収穫感謝祭では、餅やら納豆汁など多彩な郷土料理を用意しましたが、満足できましたでしょうか。
 春野がはじまり、苗づくりやパイプハウスへのビニールかけとか忙しくなってきました。
 防衛費には43兆円(安全保障費)とか言われますが、国民の職の安全保障にはいったいどれだけの経費があてられているのだろうか。どこかの誰かに言われるままの職の安全なのかな?  
【 吉野 昭男 】

 • 戦争がまぢかに見えてきた。YOASOBI、Ado、藤井 風の歌がそれを教えてくれる。
「 マッチ擦る つかの間の海に霧ふかし 身捨つるほどの祖国はありや 」
   二十歳の寺山 修司は絶対安静のベッドの上から、父を奪った国家とはなんだ、という問いを、投げかけたのだろう。  
 【 佐藤 恵一 】

 • 3/22~23、「2024年度農縁収穫感謝祭 in 新庄」に参加された皆さんいかがでしたか。
 22日夕から餅つき、納豆汁、その他持ち合わせの田舎ならではの多彩な手料理(切り干し大根の煮物・玉こんにゃく・イノシシ肉・ウルイ・フキノトウの天ぷら、etc.)を食しながらの交歓会。皆さんありがとうございました。
 23日、積もる課題の意見交換会はさながら激論会となりました。いったん決めたことがむし返され、振り出しに戻されるってこと、あるのかよ。農縁スタート時の理念・規範はあるにせよ、時代の変化に対応せず、不変であり続ける必要があるのか、疑問に思いました。
 ともあれ、懐かしい友人・知己との交流会は大変有意義だと思うとともに、こういうことは楽しくなければ、とつくづく思った次第です。
【 遠藤 信子 】

● 「丸くなるな、星になれ!」とは、ビール会社のCMのフレーズだ。これに共感する思いと、反発する思いがある。老爺心ながら、若者にはとんがれ、と言いたい(特に政治において)。老いた者には丸くなれ、と言いたい(特に人間関係において)。 年を重ねたな、と思う。【 むらのじゅうにん 】
                                     
●  我が家では 種まきを700枚づつ4日間隔で3回に分けて行う。2回目の種まきを終えた。 品種は 晩生種から順に、「つや姫」、「雪若丸」、「はえぬき」、「さわのはな」、「あきたこまち」、「ヒメノモチ」の6品種である。何故、品種を多くするか。作期幅 を拡大するため。
 面倒ではないのか。面倒だ。各品種、混ぜてはならないわけだが、特にモチゴメを作る場合、他品種と絶対混ぜてはいけない。だから、種まきはもちろん、田植え機、コンバイン、乾燥機、籾摺り機 等の掃除が大変なのだ。ために、一般的にはモチを植えるのを避ける傾向がある。
 自作地、借用地併せて面積的には手が回る範囲でかなり作っている方だと思う。が、この規模を維持していくのは今年限りにしようと思っている。つまり、縮小したいと考えている。
 政府は、強い農業を構築するために輸出を強化するという方針を立てている(農水省)。45%余の生産調整をしておきながら、である。
今朝の新聞を見て驚いた。財務省が、コメ価格高騰対応巡り、主食用コメの輸入枠拡大を提言したというのだ。45%余の減反を課しておきながら、だ。全く矛盾甚だしい。バカげたこととしか言いようがない。
 また、コメの市場流通を促すために“備蓄米”を放出した。この米は農家から通常出荷価格の半値以下で買い求めた“加工米”の一部が備蓄米と化したものである。なんぼで落札したかは分からないが、これは政府によるボロ儲けの極みなのである。百姓と国民はもっと怒っていい
【 遠藤 敏信 】  


収穫感謝祭 in 新庄
 
1回目の苗だし


新庄発 … 短信集 … 弥 生

 

2025年3月15日
編 集 : 遠藤 敏信


 ♬ 「雪が解けて川になって流れてゆきますー。つくしの子が恥ずかし気に顔を出しますー。」  この季節になると

条件反射的にこの曲が口に出る。とはいえ野にはまだ40cmほどの雪が残る。キャンデーズという女性トリオが歌った曲だ。これが49年前の曲であることに驚く。年月の速さにも驚くばかりだ。


● 3月半ば、ここに来て急激に雪解けが進んでいます。2月に2回の長期寒波で平年並みの積雪量になった感じでもあるが、陽の光りは春の兆しである。
 私が若かった頃、村の戸数は60軒だったが現在は51軒である。この半世紀の農業の衰退で村は確実に瘦せ細っている。
【 今田 多一 】


● 雪の中で余り動くことの少なかった冬の季節のなまった体、この3~4日の天気が良いので今年の種籾の選別作業を始めた。急に動いたためか足腰の筋肉痛でギックリ腰みたいな感じになったので、温泉に行き体を伸ばしてきました。
 昨年は災害の発生が多く、特に山間部の被害地の復旧はまだまだです。今年こそは穏やかな年であってほしいと祈る矢先に岩手の山火事です。何かマイナス分の事柄があまりにも続き、この先不安になります。気を付けなければ。
【 高橋 保広 】


● いつかの農業新聞から … メモ   引き算のブランド作り
 たくさんあるから選ばれない ー、良い商品がいろいろあるのに成果が出ない ー
 長所が沢山あるのに選ばれないー、足し算すると「個性」が弱まる悪循環、
 → 個性の希釈化 → 顧客減少 → 何か売れるものはないか → 品ぞろえの足し算 ↓
 ↑← ← ← ← … … … … … … … … … ← ← ← ← ← ←
資源を有効に活用するためには「何を売らないか」を決めることも重要である。
品ぞろえをむやみに足し算するとブランド力は薄まってゆく。「小学校で「引き算」=減らすこと」と思ってきた。しかし、引き算には減らす引き算だけでなく、生み出す引き算もある。強いブランドを作るためには「積極的な引き算」があることを知る必要があるだろう。 岩崎邦彦・静岡県立大学経営情報学部教授・地域経営研究センター長
今回のコメ相場は誰がブランド力を作ったのかな?
【 吉野 昭男 】


● 新庄に「農家の机」というグループがある。代表が非農家の Webライターで「農家ほど 地に足のついた商売はない」と考えている人である。事務局をされている方がデザイナーでこれまた非農家である。集まっている農家が30~40代で30人近くいる。冬期間は休業状態だが、春から秋にかけて地元のホテルの駐車場を借りて「マルシェ」の開催をはじめとして県内県外へと出かけてネットワークづくりをしている。SNS世代の新しい農の形が 新庄から動きはじめた。 
【 佐藤 恵一 】


● 発足から約30年、農縁の生産者会員は20数名から6名となった。当初コメの価格は農縁で扱うものが高かった。昨今は送料を含めても慣行栽培の普通のコメの市場価格の方が高いという逆転現象が起きてしまった。なぜかを考えてみる。農縁という組織は生消連系、都市と農村の連携、遺伝子組み換えノー、ゲノム編集ノー、などを掲げるが、理念に固執して融通が効かなくなっていはしまいか。結果、ただ高齢化が進み若い世代につながらないことになってしまった。
【 むらのじゅうにん 】


● 先月、実家の父が亡くなった。93歳まじかだった。去年の春までは車を運転し、種まきなど農作業の手伝いに来ていた。いくつになっても、娘可愛さの表われなんだと皆が言う。穏やかな心根の優しい父だった。摂理として死は避けられないものだが、かけがえのない人を亡くしたと思う。ありがとう様でした。
【 遠藤 信子 】


● ツレの父が亡くなった。寡黙で働き者だった。多くの人に慕われた。抗がん剤を投与されながら一言もねをはかなかったという。看護士さんがいう。「多くの患者さんを見てきたが、○○さんのように私達を気遣い、感謝の気持ちを伝えてくれた方はそういない」と。
【 遠藤 敏信 】


早春の息づかい















新庄発 … 短信集 … 如 月

2025年2月15日
編 集 : 遠藤 敏信                               


● 1月末に村の同級生が亡くなった。私の頃は就農すると同時に青年団に加入し、田植えを終えると土洗いと称し温泉地に一泊旅行、稲刈りを終えると、また、刈り上げと言って一泊旅行。春・秋年2回、同じ顔ぶれだから酔うと喧嘩になったりすることもあったが13人一緒の団体行動であった。欠席する者はほとんどいなかった。その後、消防団に入り、同様のことを繰り返してきた。
 村で暮らすには青年団と消防団加入は義務に近いものであり、良くも悪くも団体行動であった。青年団はとうの昔になくなり、消防団はかろうじて残っている。
 私も村で男では10本指に入る年齢になり、年長組である。
【 今田 多一 】

● 11日、テレビで「時給10円という現実 - 消えゆく農民 菅野芳秀を見た。
 2022年、1経営体当たり
 農業粗収益(作物収入・補助金含む) 378万円
 農業経営費(肥料代・光熱費等)   377万円
 農業所得                 1万円
 時給 (労働時間1030時間として 10円(農水省営農類型別経営統計から)
 ということだそうだ。

 大恐竜(都市)はまだまだ進化していくだろうけど、それを充たす空気・水・食糧をいつまでも作り出す小さな恐竜(市町村)たちが育つ場所がいつまでもあるだろうか。ないだろうか。しんぱいです。
【 吉野 昭男 】 


● 若い時スキーに没頭する時期があった。雪焼けで顔を真っ黒にして、鼻水をたらして走っている写真まである。きっとスキーに行ったらただ楽しむことができるだろう。
が、いま、冬を暮らすうえで 雪処理が辛くなってきた。母屋の北側は屋根から落ちた雪によって窓が埋まってしまい、昼でも明かりを点けなければならない状態だ。天気をみて掘り出すのだが、全く嫌な仕事だ。
 ということで、あれほど好きだった冬が、雪は嫌だ、と変節してしまった。残念ながら、とても、老いを感じてしまった。
【 遠藤 信子 】


● 全農山形の県本部が昨年暮れ、新聞に2面通しの意見広告を載せた。「未来につながる原風景を 一つでも多く残したい」、「今日のあたりまえが 未来にもつながるように」
「お茶碗1杯の価格は39円」「菓子パン1個〇〇円」などという言葉が連なる。
 農産物(特にコメ)価格が高騰する中、実は農用資材価格は3年前から50%もの値上げがなされているのである。主食である米は安いに越したことはない。が、生産者にとって対価を補償するものでなければならない、と思う。
【 遠藤 敏信 】